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【8月2日対外公表】(ヂメンシノ事件25)

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 8月2日、満水ハウスはニュースリリースを発表した。

 

各位
満水ハウス株式会社
代表取締役社長 平野恵

分譲マンション用地の購入に関する取引事故につきまして

 当社が分譲マンション用地として購入した東京都内の不動産について、購入代金を支払ったにもかかわらず、所有権移転登記を受けることができない事態が発生いたしました。顧問弁護士と協議のうえ、民事・刑事の両面において鋭意対応しておりますが、その概要について以下のとおり説明いたします。

 本件不動産の購入は、当社の契約相手先が所有者から購入後、直ちに当社へ転売する形式で行いました。購入代金の決済日をもって、弁護士や司法書士による関与の下、所有者から契約相手先を経て当社へ所有権を移転する一連の登記申請を行ったところ、所有者側の提出書類に真正でないものが含まれていたことから当該登記申請が却下され、以降、所有者と連絡が取れない状況に至りました。

 当社は何らかの犯罪に巻き込まれた可能性が高いと判断し、直ちに顧問弁護士によるチーム体制を組織のうえ、捜査機関に対して被害の申入れを行い、その捜査に全面的に協力すると共に、支払済代金の保全・回収手続に注力いたしております。

 なお、以上の件にともなう公表済みの業績予想の修正はいたしません。

 今般、関係者の皆さまには多大なご心配をお掛けすることとなりましたこと、心よりお詫び申し上げます。この度の件を受け、不動産取引ルールの再点検等を実施しており、今後も再発防止の徹底に努めてまいります。

 本件につきましては、捜査上の機密保持のため、これ以上の詳細の開示は差し控えさせていただきますので、ご了承の程宜しくお願い申し上げます。

【概要】
・対象不動産 東京都内 地積約 2,000㎡
・購入代金 70億円(支払済:63億円)
・売買契約日 4月24日
・決済日 6月1日
・所有権移転登記申請が却下された日 6月9日

 

 あっさりとしたニュースリリースだったが、広報部長である中居の力作だ。この文面を作成するために平野含めた役員が多数関与した。人件費を考えると一枚の紙に100万円ぐらいはかかっているかもしれない。満水ハウスの最終的な損失額は55億円だった。契約上は63億円を支払っていたが、その内の8億円については、満水ハウスが開発した収益物件を購入したいとの篠原側の要望があり、そのまま満水ハウスが購入代金として預かっていたのだ。

 このリリースを奥平のところに持っていき、了解を得たのはもちろん平野だ。

 会長室に入った時は、奥平は静かだった。無言で文面を見て、何も言わずに返してきた。平野も無言で頭を下げて退出した。

(続く)

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ヂメンシノ事件