事実はケイザイ小説よりも奇なり

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帝國銀行、人事部126

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 山中は一瞬面くらったようだった。わずか1秒ほどだったが沈黙が流れ、そこから山中が話し始めた。

「現場での融合はかなり進んできています。旧帝國銀行の実力主義は現在の帝國銀行にしっかりと引き継がれており、旧Yが上司、旧帝國が部下という部署、店舗も多数存在しています。行員は当行が実力主義の人事運営をしていること自体には疑問を持っていないでしょう」

「それが人事部の見解で良いんだな」西山が遮るように割り込んだ。何と言っても西山は気が短いことで有名だ。

「まどろっこしい言い方をしてしまい申し訳ありません。私の申し上げたかったことは、人事制度としてはしっかりとしています。しかし、現場の運営という観点ではまだまだ融合は道半ばです。人を評価するのは人でしかありません。問題がある人物は次々と手を打ちますが、日本では解雇は出来ません。そのため、異動させた先で、また問題を起こす事例が後を絶ちません。この傾向はどちらかと言えば旧Yの上司に多いと認識しています」

 田嶋から見れば、山中はかなり厳しい意見をぶち込んできた。頭取に旧Yのリストラをしろと言っているように聞こえるからだ。

「なんでパワハラ体質で有名な旧帝國じゃなくて旧Yの行員が問題なんだ」西山が不思議そうに尋ねる。