事実はケイザイ小説よりも奇なり

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【暗転①】(ヂメンシノ事件20)

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 昼食が終わって少し経った時間だ。

 スマートフォンが鳴った。常務の真中からだった。自分に直接電話してくるなんて珍しい。何かあったのか。

 「もしもし、平野です。どうかしましたか?」

 「平野社長、お忙しいところ申し訳ないです。担当直入に申し上げます。詐欺に引っかかりました。」真中の声がいつもとは全く違った。本当に真中からの電話だろうか。詐欺という言葉が発せられたようだが、頭に入ってこなかった。

 「は?何のことですか?」

 「五反田の海猫館です。購入代金を払いましたが、詐欺です。警察には連絡しました。」真中の話しぶりは慌てており、いつもは低い声が、上ずっていた。

 「どういうことか、もっと詳しく話をしてくれませんかね。」

 「はい。所有者ではない第三者が真の所有者のフリをしていました。購入代金のほとんどは戻ってこないでしょう。」

 少し間が空く。もう一度、今度は低くなった声が語り出す。

 「損失は55億円です。」

(続く)

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ヂメンシノ事件