事実はケイザイ小説よりも奇なり

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【11月20日取締役会前の朝①】(ヂメンシノ事件38)

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 11月20日は秋晴れと言っても良い天気だった。朝方の気温はさすがに高くはなかったが、天気予報では最高気温15度と言っている。

 今日は比較的暑くなりそうだが、それ以上に平野にとっては重要な、暑い一日だ。

 朝食はヨーグルトとフルーツで簡単にすませる。

 子供たちが独り立ちしてからは、妻に朝食の用意はやめてもらった。朝早くに起こすのは申し訳ないし、歳を重ねるにつれて食欲も落ちてきている。健康を維持するための朝食であれば、簡単なもので十分だ。

 朝6:30に家を出る。

 社用車の中で、日経新聞に目を通す。会社に行けば、秘書の成田が新聞全紙の関係する記事をまとめてくれているが、まずは自分で確認したかった。

 紙面には大手自動車メーカーで無資格の検査員が出荷前に検査をしていた問題についての社内調査最終報告書概要が掲載されていた。

 結局は人手不足ということなのだろうが、国の形骸化した規制・規則の問題もある。平野にだって、車の検査で最後に人の目を通して検査をすることがいかに無意味か分かる。自動車は、すでに機械というよりは、電子機器なのだ。外からは不具合は分からない。恐らく、最終的にはソフトウェアの出来が自動車の性能を左右するのだ。電気自動車の普及や、自動運転の実現は、大きな転換点だ。もしかしたら自動車メーカーは、組み立てだけを行う、付加価値の低い企業となってしまうかもしれない。競争力の源泉は、あくまでソフトウェア、平野の世代で言うところのプログラムなのだから。

 これは近未来において住宅にも同じことが言えるようになるだろう。

(続く)

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ヂメンシノ事件